「胡蝶蘭さんが枯れちゃった…」そんな時の蘭子流復活術

Last Updated on 2025年6月26日 by dybee

桜雨の季節も過ぎ、初夏の暖かな日差しが心地よい6月になりましたね。
蘭友さんの胡蝶蘭さんたちは、いかがお過ごしでしょうか?

この時期になると、「蘭子さん、うちの胡蝶蘭さんが枯れちゃったみたいなんです…」というご相談をよくいただきます。
お話を詳しく伺うと、実は多くの場合、胡蝶蘭さんは「枯れた」のではなく、「お疲れ」になっているだけなんです。

私も栽培を始めた頃、初めていただいた胡蝶蘭さんを1ヶ月で枯らしてしまい、涙を流した経験があります。
でもその後20年間の栽培経験を通して分かったのは、「枯れた=終わり」ではないということです。
適切なケアをしてあげれば、胡蝶蘭さんは驚くほど強い生命力で復活してくれるのです。

今日は、そんな胡蝶蘭さんの復活術を、私の失敗談も交えながらお話しさせていただきますね。
最後まで読んでいただければ、きっと希望が見えてくるはずです。

なぜ胡蝶蘭さんは枯れてしまうの?

よくある5つの原因とそのサイン

胡蝶蘭さんが弱ってしまう原因は、実はそれほど多くありません。
20年間で数え切れないほどのご相談をお受けしてきましたが、ほとんどが以下の5つのパターンに当てはまります。

主な枯れる原因と見分け方

  • 水のやりすぎ(根腐れ):根が黒く変色、嫌な臭いがする
  • 直射日光による葉焼け:葉が茶色く焦げたように変色
  • 日光不足:葉が黄緑色になり、だらりと垂れ下がる
  • 温度管理の失敗:葉がしおれる、花が急に落ちる
  • 乾燥しすぎ:葉にしわが寄り、花がカサカサになる

この中でも、圧倒的に多いのが「水のやりすぎによる根腐れ」です[1]。
園芸店時代の経験では、お客様のトラブルの約8割がこの原因でした。
「可愛がって毎日お水をあげていたのに…」というお声をよく聞きますが、胡蝶蘭さんにとって毎日の水やりは実は負担になってしまうのです。

蘭子さんの実体験:「私も最初は気づけませんでした」

恥ずかしながら、私も最初の頃は胡蝶蘭さんの「本当の気持ち」を理解できていませんでした。
25歳の時、結婚祝いでいただいた美しい白い胡蝶蘭さんを、愛情たっぷりに毎日水やりをして、1ヶ月で枯らしてしまったのです。

その時の私は、「植物=毎日水やり」という固定観念にとらわれていました。
でも後から学んだのは、胡蝶蘭さんの故郷は東南アジアの熱帯雨林で、大きな木に寄り添って生きる着生植物だということです。
つまり、土の中ではなく空気中の湿気から水分を得て生きているのですね。

あの時の失敗があったからこそ、今では胡蝶蘭さんの気持ちに寄り添った栽培ができるようになりました。
失敗は決して無駄ではありません。
それは胡蝶蘭さんとより深くつながるための、大切な学びの機会なのです。

見た目で判断しないで!”本当に枯れた”か見極める方法

「枯れた」と思われがちな胡蝶蘭さんでも、実は生きている場合がとても多いのです。
ここが、胡蝶蘭さんの素晴らしいところでもあります。

生きているサインの確認方法

  1. 葉の状態をチェック:完全に黄色くなっていても、1枚でも緑の部分があれば大丈夫
  2. 根の確認:鉢から少し出して、白や緑色の根が1本でもあれば復活可能
  3. 株元の硬さ:指で軽く押して、しっかりとした硬さがあれば生きている
  4. 新芽の有無:小さくても新しい芽が出ていないか観察

私の経験上、花が全部落ちて葉っぱも黄色くなった胡蝶蘭さんの約7割は、適切なケアで復活してくれます。
胡蝶蘭さんの寿命は50年以上ともいわれており[2]、株自体の生命力は本当に強いのです。

最も重要なのは、諦めずに胡蝶蘭さんの「生きる力」を信じてあげることです。
私たちが思っている以上に、胡蝶蘭さんは頑張り屋さんなんですよ。

蘭子流・復活術のステップガイド

ステップ1:まずは状態チェックから

復活術の第一歩は、胡蝶蘭さんの現在の状態を正確に把握することです。
慌てて何かをするよりも、まずは落ち着いて観察してあげましょう。

私がいつもお客様にお伝えしているのは、「胡蝶蘭さんとの対話」から始めることです。
鉢を手に取り、重さを感じ、葉っぱの質感を確かめ、根元の匂いを嗅いでみてください。
五感を使って胡蝶蘭さんの声に耳を傾けることで、何が必要なのかが見えてきます。

状態チェックのポイント

  • 全体的な印象:元気度を10段階で評価
  • 葉の枚数と色:健康な緑の葉が何枚残っているか
  • 根の色と硬さ:白・緑は健康、茶・黒は傷んでいる
  • 植え込み材の状態:湿り具合、腐敗臭の有無
  • 害虫や病気の兆候:葉の裏側や株元も忘れずに

この段階で大切なのは、完璧を求めすぎないことです。
多少葉っぱが黄色くなっていても、根が少し傷んでいても、それはよくあることなのです。

ステップ2:傷んだ部分のケア方法(葉・根・茎別)

状態確認ができたら、次は傷んだ部分を丁寧に取り除いてあげましょう。
これは人間でいう「傷口の手当て」のようなものです。

まず、枯れた花や花茎から処理します。
花が終わった胡蝶蘭さんは、花を咲かせ続けるために大きなエネルギーを使っていますので、しおれた花は付け根からそっと摘み取ってあげてください。
花茎は、株を休ませたい場合は根元から、二度咲きを狙いたい場合は下から3〜4節目でカットします。

部位別ケア方法

  • 葉のケア:黄色い部分は根元から清潔なハサミでカット
  • 根のケア:黒く腐った根は健康な部分まで切り戻す
  • 茎のケア:花茎は目的に応じて切る位置を調整
  • 消毒:カットした断面には殺菌剤を塗布

私の温室では、作業前に必ずハサミをライターで炙って消毒します。
これは園芸店で働いていた頃に先輩から教わった方法で、細菌感染を防ぐ大切な工程です。

根の処理は特に慎重に行います。
健康な白い根は絶対に傷つけないよう、腐った黒い根だけを丁寧に取り除きます。
時には根の大部分を切らなければならないこともありますが、健康な根が1本でも残っていれば復活の可能性は十分にあります。

ステップ3:植え替えのタイミングと方法

傷んだ部分の処理が終わったら、多くの場合、植え替えが必要になります。
特に根腐れを起こしている場合は、古い植え込み材を全て取り除いて、新しい環境を整えてあげることが大切です。

植え替えに最適な時期は4〜6月ですが、復活術の場合は時期に関係なく行います。
胡蝶蘭さんの命を救うことが最優先だからです。

植え替えの手順は、まず古い植え込み材を丁寧に取り除くことから始まります。
水苔の場合は根に絡みついているので、ぬるま湯に浸してやわらかくしてから、指先で優しくほぐしていきます。
この時、健康な根を傷つけないよう、時間をかけて丁寧に作業することが重要です。

植え替えの基本手順

  1. 準備:新しい鉢、水苔またはバーク、殺菌剤を用意
  2. 古い材料の除去:根を傷つけないよう慎重に取り除く
  3. 根の整理:健康な根を残し、傷んだ根をカット
  4. 新しい鉢に植付け:根が呼吸できるよう適度な詰め具合で
  5. 安定期間:植え替え後2週間は水やりを控える

植え替え後の胡蝶蘭さんは、新しい環境に慣れるまで時間が必要です。
この期間は私たちも忍耐が必要ですが、胡蝶蘭さんを信じて見守ってあげましょう。

ステップ4:リハビリ期間中の水やりと置き場所

植え替えが完了したら、胡蝶蘭さんのリハビリ期間が始まります。
この時期の管理が、復活の成否を左右する最も重要なポイントです。

水やりについては、植え替え直後は根がダメージを受けているため、2週間程度は控えめにします。
その後は、植え込み材の表面が完全に乾いてから、さらに3日待って水を与えるようにしてください。
量は一回につきコップ1杯程度で十分です。

置き場所は、明るいけれど直射日光の当たらない場所を選びます。
私の温室では、遮光率50%のネットを張った場所でリハビリをさせています。
一般家庭では、レースカーテン越しの窓際が理想的です。

リハビリ期間の管理ポイント

  • 温度:20〜25℃を維持(特に夜間の冷え込みに注意)
  • 湿度:60〜70%(霧吹きで葉水を与える)
  • :明るい日陰(直射日光は厳禁)
  • 風通し:適度な空気の流れを確保
  • 観察:毎日の状態変化をチェック

リハビリ期間中は、変化が見えるまで時間がかかることもあります。
新しい根や芽が出てくるまで、短くても1ヶ月、長い場合は3ヶ月程度かかることもあります。
でも、諦めずに愛情を注ぎ続けることで、胡蝶蘭さんは必ず応えてくれます。

ステップ5:心のケアも忘れずに(育て手の気持ち)

復活術で意外と重要なのが、私たち育て手の気持ちです。
胡蝶蘭さんが弱っているのを見ると、不安になったり焦ったりしてしまいますが、その気持ちは胡蝶蘭さんにも伝わります。

私が栽培を通して学んだのは、植物は私たちの心の状態を敏感に感じ取るということです。
毎朝温室で胡蝶蘭さんたちに「おはよう」と声をかけていますが、私の機嫌が悪い日は胡蝶蘭さんたちの調子も今ひとつな気がします。

復活を目指す期間中は、結果を急がず、胡蝶蘭さんのペースに合わせてあげることが大切です。
「今日は葉っぱの色が少し良くなったかな?」「新しい根が出てきそうな気配がする」など、小さな変化を見つけて一緒に喜んであげてください。

育て手の心構え

  • 焦らない:胡蝶蘭さんには胡蝶蘭さんのペースがある
  • 観察を楽しむ:毎日の小さな変化を発見する喜び
  • 信じ続ける:必ず復活すると信じる気持ち
  • 愛情表現:話しかけたり、優しく触れたりする
  • 記録をつける:変化の過程を写真や日記で残す

胡蝶蘭さんとの向き合い方は、人間関係にも通じるものがあります。
相手のことを理解しようとする気持ち、忍耐強く見守る愛情、そして信じ続ける心。
これらすべてが、胡蝶蘭さんの復活につながる大切な要素なのです。

復活成功のための環境づくり

湿度・温度・光の”バランス三兄弟”を整える

胡蝶蘭さんの復活を成功させるためには、環境の「バランス三兄弟」と私が呼んでいる、湿度・温度・光の調和が欠かせません。
この3つのバランスが崩れると、せっかくの復活の芽も摘んでしまうことになります。

まず温度管理ですが、胡蝶蘭さんにとって理想的なのは18〜25℃の範囲です[3]。
特に夜間と日中の温度差が5℃程度あることが、胡蝶蘭さんの自然なリズムを保つのに重要です。
私の温室では、夏場は遮光と通風で温度上昇を抑え、冬場は加温器で低温を防いでいます。

湿度については、60〜80%を維持することを心がけています。
これは胡蝶蘭さんの故郷である熱帯雨林の環境に近い数値です。
一般家庭では、加湿器を使ったり、鉢の周りに水を張った受け皿を置いたりして調整します。

環境の理想的な数値

項目理想値夏季の注意点冬季の注意点
温度18-25℃30℃を超えないよう遮光・通風15℃を下回らないよう保温
湿度60-80%風通しを良くして蒸れ防止加湿器や霧吹きで乾燥防止
光量明るい日陰遮光率50-70%で直射日光避ける日照時間確保、窓際で日光浴

光については、「明るい日陰」という表現がぴったりです。
直射日光は葉焼けの原因になりますが、暗すぎると光合成ができず、体力回復が遅れてしまいます。
木漏れ日のような、やわらかい光を長時間当ててあげることが理想的です。

静岡式温室管理のポイント(寒冷地の方へのアドバイスも)

私の住む静岡県浜松市は、胡蝶蘭栽培にとって比較的恵まれた環境です。
温暖な気候で年間を通して温度変化が緩やかなため、胡蝶蘭さんたちも過ごしやすそうです。

でも、北海道や東北地方など寒冷地にお住まいの蘭友さんからも、たくさんのご相談をいただきます。
寒い地域でも胡蝶蘭さんの復活は十分可能ですので、ご安心くださいね。

寒冷地での復活術のコツは、とにかく温度の確保です。
室内でも外気温に左右されやすいので、発泡スチロールの箱を使った「簡易温室」を作ることをおすすめします。
箱の中に胡蝶蘭さんを入れ、小さな温度計と湿度計を一緒に入れて、環境をモニタリングします。

寒冷地での特別対策

  • 簡易温室の作成:発泡スチロール箱+温湿度計で環境制御
  • 暖房器具の活用:エアコンの暖房でOK(直接風は当てない)
  • 日光の有効活用:晴れた日は窓際で日光浴、夜は室内中央へ移動
  • 保温マットの使用:鉢の下に園芸用保温マットを敷く
  • 湿度の確保:洗面器に水を張って近くに置く

反対に、沖縄や九州南部など温暖すぎる地域では、夏場の高温対策が重要になります。
30℃を超える環境では胡蝶蘭さんも夏バテしてしまうので、エアコンや扇風機を使って温度を下げてあげてください。

地域による違いはありますが、基本的な復活術の考え方は同じです。
胡蝶蘭さんの故郷の環境にできるだけ近づけてあげることが、成功への近道なのです。

家庭でできる「応急処置グッズ」紹介

胡蝶蘭さんの復活術には、特別な道具は必要ありません。
家庭にあるものや、ホームセンターで手軽に手に入るもので十分対応できます。

私がいつもお客様におすすめしている「復活セット」をご紹介しますね。
これらがあれば、突然の体調不良にも慌てずに対応できます。

基本の応急処置グッズ

  • 清潔なハサミ:花茎カットや根の整理に(100円ショップのものでOK)
  • ライターまたはアルコール:ハサミの消毒用
  • 霧吹き:葉水や湿度調整に使用
  • 割り箸:植え込み材の状態確認や根の整理に便利
  • 新聞紙:作業場所の保護や根の乾燥に使用

応急処置で最も大切なのは、慌てずに冷静に対応することです。
胡蝶蘭さんの様子がおかしいと思ったら、まずは上記のグッズを用意して、状態をしっかりと観察してください。

温度計と湿度計は、できれば1つずつ用意しておくことをおすすめします。
私たちが感じる「暑い・寒い」「湿っている・乾いている」は、意外と曖昧なものです。
数値で環境を把握することで、より的確な判断ができるようになります。

さらに進んだケアをお考えの方には、活力剤や殺菌剤もおすすめです。
ただし、これらは緊急時に必要なもので、日常的に使うものではありません。
胡蝶蘭さんの本来の力を信じて、最小限の手助けにとどめることが大切です。

再び咲かせるためにできること

花芽分化を促す工夫(季節別アプローチ)

復活した胡蝶蘭さんに再び美しい花を咲かせてもらうには、花芽分化のメカニズムを理解することが重要です。
胡蝶蘭さんは秋の涼しさを感じると、花を咲かせる準備を始める性質があります[3]。

具体的には、平均気温が21℃程度(最低気温18℃)の環境に30日ほど置かれることで、花芽が形成されます。
これは胡蝶蘭さんの体内時計のようなもので、自然界では10〜11月頃に起こる現象です。

私の温室では、意図的に温度を下げて花芽分化を促すことがあります。
でも一般家庭では、自然の季節変化を利用するのが一番安全で確実な方法です。

季節別の花芽分化アプローチ

  • 春(3-5月):新芽の成長を促進、十分な栄養蓄積
  • 夏(6-8月):葉数を増やし、体力をつける
  • 秋(9-11月):自然な温度低下で花芽分化誘導
  • 冬(12-2月):低温期で花芽発達、春の開花準備

現在の6月は、胡蝶蘭さんにとって成長期真っ盛りの時期です。
復活した胡蝶蘭さんには、まずしっかりとした葉っぱを増やしてもらい、来年の開花に向けて体力をつけてもらいましょう。

花芽分化は胡蝶蘭さんにとって大きなイベントです。
十分な準備期間をかけて、ゆっくりと見守ってあげることが、美しい花を咲かせる秘訣なのです。

私が5年間続けた「毎朝5分の声かけ習慣」

復活した胡蝶蘭さんと向き合う中で、私が大切にしているのが「毎朝の声かけ」です。
これは5年前から続けている習慣で、温室での一日は必ずこの時間から始まります。

朝6時、温室の扉を開けて「おはよう、みんな元気?」と声をかけながら、一鉢ずつ胡蝶蘭さんたちの様子を確認します。
葉っぱの色つや、新しい根の成長、花芽の発達など、昨日からの変化を丁寧に観察していきます。

この習慣を始めてから、胡蝶蘭さんたちの調子が明らかに良くなりました。
もちろん、声をかけること自体に直接的な効果があるわけではありません。
でも、毎日の観察を通じて、小さな変化に早く気づけるようになったのです。

声かけ観察のポイント

  • 新しい根:白い根の先端が伸びているか
  • 葉の状態:色つや、厚み、しわの有無
  • 成長点:新芽の発達状況
  • 全体バランス:株全体の安定性
  • 環境変化:温度、湿度、光の状態

復活途中の胡蝶蘭さんには、特に優しく声をかけています。
「今日は少し元気になったね」「新しい根が出てきたよ、頑張ってるね」など、変化を見つけたらすぐに褒めてあげます。

科学的根拠があるかどうかはわかりませんが、愛情を込めて育てられた胡蝶蘭さんは、確実に美しく育ってくれます。
これは20年間の栽培経験から確信していることです。

植物と人間の間には、目に見えない絆があるのだと思います。
毎日の声かけは、その絆を深める大切な時間なのです。

よくある二次失敗とその予防策

復活の過程で、残念ながら二次的な失敗をしてしまうケースもあります。
せっかく回復の兆しが見えていたのに、ちょっとしたミスで再び体調を崩してしまうのです。

最も多いのが、「回復したと思って水やりを増やしてしまう」失敗です。
新しい根が出てきたり、葉っぱの色が良くなったりすると、つい嬉しくなって水を多く与えてしまいがちです。
でも、復活途中の胡蝶蘭さんは、まだ本調子ではありません。

私も過去に何度かこの失敗を経験しています。
特に印象に残っているのは、根腐れから復活しかけていた胡蝶蘭さんに、調子に乗って液体肥料を与えてしまった時のことです。
翌週には再び根が黒くなり、結局その胡蝶蘭さんを救うことができませんでした。

よくある二次失敗とその対策

  • 水やり過多の再発:回復しても以前の頻度を維持
  • 肥料の早すぎる開始:完全回復まで肥料は控える
  • 環境の急激な変化:置き場所を頻繁に変えない
  • 植え替えの繰り返し:一度植え替えたら最低1年は様子見
  • 過度な期待:回復には時間がかかることを受け入れる

二次失敗を防ぐコツは、「急がば回れ」の精神です。
回復の兆しが見えても、基本的なケアは継続し、変化は段階的に行うことが大切です。

また、記録をつけておくことも有効です。
いつ植え替えをしたか、どんな変化があったか、写真や日記で残しておくと、後から振り返って学ぶことができます。

胡蝶蘭さんの復活は、マラソンのような長距離走です。
スタートダッシュで息切れするのではなく、最後まで走り切る持久力が求められるのです。

蘭友さんからの声と蘭子さんの励まし

「あきらめないでよかった」復活体験談3選

この20年間で、多くの蘭友さんから感動的な復活体験談をお聞きしてきました。
その中から、特に印象深い3つのエピソードをご紹介させていただきますね。

体験談1:北海道の田中さん(60代女性)
息子さんの結婚式でいただいた胡蝶蘭が、厳しい冬を越せずに葉っぱを全て落としてしまいました。
「もうだめかと思った」そうですが、私のアドバイス通り発泡スチロールの簡易温室を作り、3ヶ月間見守り続けました。
春になって新芽が出てきた時は、電話口で一緒に泣いてしまいました。
その胡蝶蘭さんは翌年、見事に花を咲かせてくれたそうです。

体験談2:大阪の山田さん(40代男性)
会社でもらった胡蝶蘭を根腐れで枯らしてしまい、「植物を育てる才能がない」と落ち込んでいました。
でも奥様の勧めで復活にチャレンジし、見事に成功。
今では自宅で10鉢以上の胡蝶蘭を育てる立派な愛好家になられました。
「胡蝶蘭さんが教えてくれたのは、諦めない気持ちの大切さでした」とおっしゃっています。

体験談3:福岡の佐々木さん(50代女性)
母親の形見の胡蝶蘭を、どうしても枯らしたくないとご相談いただきました。
株分けして3鉢に増やし、そのうち1鉢が見事に復活。
「お母様もきっと喜んでいらっしゃいますね」とお話しすると、「胡蝶蘭さんを通じて母との絆を感じています」と涙ながらに話してくださいました。

これらの体験談に共通しているのは、諦めずに愛情を注ぎ続けたことです。
胡蝶蘭さんは、私たちの気持ちをしっかりと受け取って、それに応えてくれる素晴らしい植物なのです。

蘭子さんのQ&A:「こんな時どうしたら?」

栽培指導をしていると、様々な質問をいただきます。
特に復活術に関する質問で多いものを、Q&A形式でお答えしますね。

Q1:復活までにどのくらい時間がかかりますか?
A1:胡蝶蘭さんの状態によって大きく異なりますが、新しい根や芽が出るまで1〜3ヶ月、完全復活まで6ヶ月〜1年程度が目安です。焦らずに長い目で見守ってあげてください。

Q2:根が全部黒くなってしまいました。もう無理でしょうか?
A2:諦めるのはまだ早いです!茎の部分がしっかりしていれば、新しい根が出る可能性があります。腐った根を全て取り除き、殺菌剤を塗布して様子を見てください。

Q3:復活中に肥料を与えても大丈夫ですか?
A3:復活途中の胡蝶蘭さんには、肥料は控えめにしてください。新しい根がしっかりと張り、新芽が安定するまでは、薄めた液体肥料を月1回程度にとどめることをおすすめします。

復活術でよくある質問

  • 水やり頻度:植え込み材が完全に乾いてから3日後
  • 置き場所の変更:できるだけ同じ場所で安定させる
  • 二度咲きの時期:完全復活後、自然な花期を待つ
  • 植え替え頻度:復活後は2〜3年に1回程度

どんな質問でも遠慮なくお聞かせください。
胡蝶蘭さんの復活は、一人で抱え込まずに、みんなで情報を共有しながら取り組むことが成功への近道です。

みなさんの失敗も、貴重な栽培データです

最後に、失敗について少しお話しさせてください。
私のところには、成功談だけでなく、たくさんの失敗談も寄せられます。
「蘭子さん、また枯らしてしまいました…」という、申し訳なさそうなご連絡もよくいただきます。

でも、私はいつもお答えします。
「失敗は貴重な学びの機会です。どんな失敗だったか、詳しく教えてください」と。

実際、皆さんの失敗談から学ぶことは本当に多いのです。
「こんな環境でこんなことをしたら、こうなった」という情報は、同じような環境で栽培している他の蘭友さんにとって、とても価値のあるデータなのです。

私自身も、20年間で数え切れないほどの失敗を重ねてきました。
温度管理を怠って15株を一度に失ったこと、新しい栽培方法を試して大失敗したこと、お客様の大切な胡蝶蘭さんを枯らしてしまったこと…。

その度に落ち込み、自信を失いそうになりましたが、失敗から学んだことが今の私の栽培技術の基礎になっています。
失敗は決して無駄ではありません。
それは次の成功への大切なステップなのです。

失敗から学ぶ姿勢

  • 原因の分析:なぜ失敗したのかを冷静に考える
  • 記録の保存:同じ失敗を繰り返さないためのメモ
  • 経験の共有:他の栽培者との情報交換
  • 前向きな態度:失敗を次への学びとして捉える
  • 継続する意志:失敗にめげずに挑戦を続ける

胡蝶蘭栽培の醍醐味は、胡蝶蘭さんとの対話を通じて、お互いが成長していくことだと思います。
失敗も成功も、すべてその過程の大切な一部分なのです。

まとめ

梅雨入りを控えたこの時期、胡蝶蘭さんにとってもちょっと体調を崩しやすい季節ですね。
でも今日お話しした復活術を知っていれば、もし胡蝶蘭さんの調子が悪くなっても、慌てずに対応できるはずです。

何より大切なのは、「枯れた=終わり」ではないということを覚えておいてください。
胡蝶蘭さんの生命力は、私たちが思っている以上に強く、そして美しいものです。
適切なケアと愛情があれば、きっと復活して、以前よりも美しい花を咲かせてくれることでしょう。

蘭子流復活術の基本は、「観察・ケア・気持ち」の3つです。
胡蝶蘭さんをよく観察して状態を把握し、適切なケアを施し、そして何より愛情を込めて見守り続けること。
これが復活成功への最短距離なのです。

私も最初は失敗ばかりでした。
でも胡蝶蘭さんたちが教えてくれたのは、諦めない気持ちの大切さです。
一緒に美しい胡蝶蘭を育て、その喜びを分かち合いましょう。

あなたの胡蝶蘭さんは、今どんな状態ですか?
もし何か心配なことがあれば、いつでもコメント欄で教えてくださいね。
蘭友さんみんなで、胡蝶蘭さんの復活を応援していきましょう! 🌺


参考文献

[1] 胡蝶蘭の通販専門店フラワースミスギフト|産地直送・当日発送可能

[2] 胡蝶蘭が枯れた後の作業|育て方や処分について | 観葉植物・お花の通販 AND PLANTS

[3] 温度で胡蝶蘭を好きな時期に咲かせる《開花調整方法》|胡蝶蘭ステーション

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